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日程・対象公演
11月25日(土)19:00開演
劇団こふく劇場「ロマンス」 永山智行さん(作・演出)
会場
シアターZOO
〒064-0811 札幌市中央区南11条西1丁目3-17 ファミール中島公園B1F
コーディネーター
三瓶竜大(劇団清水企画/ポケット企画)
概要はこちら
札幌市、中島公園のすぐ隣にある小劇場、シアターZOOにて上演された劇団こふく劇場さんの公演『ロマンス』の上演後に企画された、「札幌演劇いまとこれから02『U29限定 演劇の地域性について考える観劇&交流会』」。
九州・宮崎を拠点に活動する劇団こふく劇場の作・演出担当の永山智行さんと、劇団員である有村香澄さん、池田孝彰さんが、札幌で演劇活動を行っている29歳以下の方たちと直接言葉を交わす交流会で、伺った日は同企画の第2回目でした(1回目は大阪のオパンポン創造社さんとの交流会)。
コーディネーターの三瓶竜大さんの仕切りで始まり、作品を観劇した直後だったので、まずは参加者から上演作品の感想が伝えられました。
全編、宮崎の方言が使われているため、その言葉の持つリズム感や温かさなどについての感想が多く、次に、独特な“様式”の演出(移動がすり足、セリフはほぼ正面ぶりなど)についての質問もたくさん出てきました。おそらく札幌の若手演劇人にとっては目新しい作風だったのでしょう。しかし、それが“九州の劇団”の特徴ではないということはわかっていたようで、「地域性」というテーマを離れ、話はむしろ「普遍性」の方に進みます。
永山さん曰く、方言は意図的に使っているが、描きたいのは「普遍性」で、様式にはめ込み、動きに制約を加えることで、むしろ、そこからはみ出した部分が“個性”としてお客様の印象に残り、そこが魅力的に映るのだとか。扱うシチュエーションも基本的には日常の一コマのようなシーンが多く、決して“九州ならでは”というものではありませんでした。
話は、当初のテーマであった「地域性」の部分にはなかなか入れませんでしたが、永山さんのお話を聞いていると、やはりこの作風になるための環境が、地域にあったのだということが徐々にわかっていきます。
劇団こふく劇場さんの本拠地は三股町という小さな町で、その文化会館のフランチャイズカンパニーとして、行政と連携し、演劇を通した地域との交流を深めています。そのため地元で公演をすると、よく知っている方々がお客さんとして観にいらっしゃる環境にあり、結果的に、地元の人たちに喜ばれるものを作ろう、という発想に。
一方、札幌演劇で活躍しているある若手俳優の方は、他劇団に負けまい、他所よりも面白いものを、という発想になりがちだと発言されていました(これは東京の小劇場でも同じことが起きているかもしれません)。
永山さんたちは、自分の作りたいものを作る、の精神ではなく、町の人たちが認めてくれるもの、その人たちに見せて恥ずかしくないものを作ろう、というマインドになるといいます。九州だからということではなく、特定のコミュニティで活動することによる、作風への影響はきっとあるのだろうと感じました。
永山さんは、今、自分が持っていないものを、“夢”や“目標”として欲するよりも、自分が持っているものを強みにして、それをありのまま発信していくことがとても重要なのだと言います。人生とは自分でプランニングできないことの連続であり、それをポジティブに捉えることができると、人生も作品も豊かなものになる、というメッセージが、札幌の若者たちに送られました。
この日、ここに集まった人たちの出会いは偶然かもしれませんが、せっかくなら、この出会いを価値あるものにしていこうと、最後に三瓶さんの提案で、全員の集合写真を撮ることになりました。そこには演者と観客という関係性ではなく、地域を超えて互いに演劇に取り組んでいる者同志としての豊かなふれあいが生まれており、楽しく和やかな雰囲気の中、交流会は終わりました。
“地域性”以上に、大切な学びのあった会で、“交流”というものの価値や重要性を感じることができた企画でした。
レポート:福永光宏