プロジェクトが目指す「未来」
「日本の演劇」未来プロジェクトは、新型コロナウイルスの世界的流行という緊急事態に直面し生まれた、舞台芸術業界の新たな連携・連帯を象徴する事業です。
日本の演劇の未来を見据えて結集した、緊急事態舞台芸術ネットワークの各団体が、全国各地を舞台に各々の力を最大限発揮することで、舞台芸術の持つ唯一無二の価値を社会へと広く発信していきます。

コロナ禍において、未だかつてない逆境を経験した今だからこそわかること、できること。
人と人が集い、つながることで生まれる力。その無限の可能性と、演劇界の未来を信じて――
代表理事挨拶
劇団四季 吉田智誉樹
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に変わり、長い間、舞台芸術界を苦しめたコロナ禍は、新しいフェーズに入ったように思います。ですが、コロナ以前の状況を完全に取り戻せたかというと、必ずしもそうとは言いきれない。生活様式やお客様の考え方が変化した影響は依然として残っており、完全な回復の為の努力は、まだまだ必要なのだと思います。そのような中、“「日本の演劇」未来プロジェクト2023”が果たすべき役割と意義はとても大きいように思います。
特に本プロジェクトが、首都圏だけでなく、全国各地の舞台芸術の振興に目を向けていることの意義は、文化の東京一極集中の是正という観点からも大切なことです。また、今回新たに加わった施策にも、こうした地域間の連携の強化を目的としたものが含まれると伺っており、大変心強く思います。
成長著しかったコロナ前の舞台芸術界の活況を取り戻すためには、本プロジェクトは必ず成功させねばなりません。精一杯の努力で取り組んで参りたいと思います。
NODA・MAP 野田秀樹
『寄ってたかって、光りましょう』
一昔前の韓流ドラマに続き、韓国エンタメによって、もはや巷間の若い人は、カフェで
「韓国人みたいで格好いいね」
と言っている(まさに今私は、真横で聞いている)し、うちの娘は、韓国語で韓国アイドルの歌を口ずさんでいる。
大昔、故某都知事が「三国人」などと差別語を連発して、優越感に浸っていた時代とはもはや隔世の感がある。どんなに内側から「日本は美しい、美しい」と叫んでも、美しさを決めるのは、外からであり、それを内から光って見せるのが、文化なのだ。文化は外から見える。共同体の外から文化が透けて見える。今、日本は韓国のように光っているだろうか?
そんなことばかりも言っていられない。
文化で発光してみせる日本でありたい。コロナ禍下で、奇しくも繋がることのできた、このネットワークが、あの時、コロナ禍を乗り越えたように、日本の文化をこうした姿にするために、次なるステージへ向かうべく尽力できたら、どんなにか素敵だろう。素敵だろう、などと他人事でなく、私もその一員として、力を尽くしていきたい。みんなで、寄ってたかって、「光りましょう」
東宝株式会社 池田篤郎
この度のコロナ禍で、皆さんが強く感じられたのは、「人と人との繋がりの大切さ」だったのではないでしょうか。リアルな環境でのコミュニケーションもなかなか取れず、実際に会えたにしてもマスク越しで表情もよく見えない、お互いの気持ちが通いにくい不自由な生活が本当に長い間続いてきました。
演劇に携わる私たちは、こうした厳しい環境の中、皆さまに「心の糧」となる作品をお届けして豊かな感性に触れていただき、その潤いを取り戻していただくために、ともに手を携えて、これまでも様々な取り組みに挑んで参りました。
その中でも、この「日本の演劇」未来プロジェクトは、世の中は回復過程にはありながら、未だ都市部と地方ではその進み方に違いがある中で、質の高い文化芸術活動を支援し、全国各地での観劇機会を更に高めるために活動する大きな意義を持つものです。
その名の通り、「日本の演劇の未来」をしっかりと見据え、人々のもとに優れた作品をお届けして楽しんでいただくとともに、お客様とともに世界に誇る文化を築いていくこの大きな取り組みに、皆さまのご参加を心からお待ちしております。
プロジェクトの取り組み
公演事業
新型コロナウイルス感染症で大きく萎縮した鑑賞環境を元に戻すとともに、日本を代表する22団体と全国28地域で行われる質の高い文化芸術活動を重点的に支援することで、人・作品・場などの流動性を高め、事業者の活動の安定化と実施地域の活性化を目指します。また、文化芸術の重要性や魅力を発信することにより、需要喚起を図ります。
連携事業
会員間の連携を目的に、地域、規模、ジャンル、世代を超えたつながりづくりに取り組みます。「シン・つながりプロジェクト」では、次世代を担う若手制作者によるネットワーク構築を推進。「アートキャラバン・サテライト」では、協力団体と地元の施設・演劇人によるプロジェクトを展開します。
広報事業
舞台芸術の裾野を広げる未来にむけた様々な取り組みを実施します。活動報告書「みらいジャーナル」やリクルートイベント「舞台芸術おしごとナビ」、現在の課題を共有するための「年次シンポジウム」など、各種イベントを通じて広くお伝えしていきます。
調査・研究事業
「業界横断定点調査」では、昨年度に引き続き舞台芸術界を産業として捉えて、客観的な指標データ収集を目指します。「舞台芸術業界強靭化のための研究・調査」では、舞台芸術界の未来のために、業界全体で取り組むべき課題をテーマに海外事例などの研究・調査を行います。
主催
助成