アートキャラバン・サテライト企画レポート オフィスプロジェクトM編

「戯曲」を読み解くワークショップ
三島由紀夫『鹿鳴館』を読む!

日程

2023年12月7日(木)18:00~20:30 中音楽室(1日目)

会場

JMSアステールプラザ
〒730-0812 広島県広島市中区加古町4-17

講師

・丸尾聡(オフィスプロジェクトM)
・川口典成(ドナルカ・パッカーン)
・江花実里(架空畳)

概要はこちら

広島市を代表する文化施設・アステールプラザの一室に、ところ狭しと椅子が並べられ、当初設けていた定員よりも少し多くの参加者を迎えて、ワークショップは始まりました。

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集まった参加者は年齢層はバラバラでしたが、顔見知りの人もいるようで、開始前から盛り上がりを感じました。受付では何種類かの資料が配布されるのですが、その中には「ハラスメント防止ガイドライン」も含まれており、参加者が安全に参加できるよう共通のルールが提示されています。現地制作には、広島の団体である「舞台芸術制作室 無色透明」の岩﨑きえさんたちが入られ、ワークショップ全体の進行をしてくださっていました。

最初に丸尾さんから自己紹介と、この企画のコンセプトが語られます。「『戯曲』を読み解くとは、どういうことなのか?」についてです。どうしても難しいイメージのある「戯曲」ですが、実はとても面白い文学であり、いわゆる「解釈」も人の数だけあってよく、いろいろあるからこそ面白いのだと説明してくれました。

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今回のテーマとして取り上げる三島由紀夫に限らず、近代の作家はわりとみんな「戯曲」を書いており、かつてはそれほどにポピュラーでベーシックなものだったこと、主に“セリフ”で成立しているので解釈の余白がたくさんあり、このワークショップで言えば23人分の解釈を聞けるいい機会であることなど、戯曲の基本情報や、この企画のポイントも共有してくださいました。

次に参加者にも自己紹介をしてもらいましたが、改めて本当にいろいろな方が参加していることがわかります。演劇経験者はもちろん、観る専門の方、映画監督もやっているという方、さらには三島由紀夫を研究している方まで。広島には多くの劇団があり、活発に活動されているということもよくわかりました。

4日間のワークショップのうち初日であったこの日は、全四幕のうち、一幕部分の読み合わせからスタートします。ここからは川口さんの進行で「セリフ量とは関係なく1人1ページずつ読む」というルールでの読み合わせでした。後から聞いたことですが、1人1役にしてしまうと、役に対するアプローチが強くなり、戯曲全体の構造を理解するのが後回しになってしまう傾向にあるのだとか。今回は「戯曲」自体を学ぶ機会なので、役への感情移入は置いておいて、一幕がどんな構成になっているのかにスポットを当てたかったということでした。

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一幕を一通り読んだ後、全体を3つのグループに分け、それぞれで感想や疑問を言い合うディスカッションの時間を取ります。グループごとに進め方はいろいろでしたが、「好きなセリフは?」「意味がわからなかった場面は?」などの初歩的なところから、「この時代の身分制度が関係している」「女性蔑視が感じられる」など、かなり深掘りした議論になっているところもありました。

興味深かったのは、「明治の文学なのでどうしてもわからない単語や文化が出てくる。そういったことを理解していないと、正しく戯曲を解釈できないのでは?」という意見に対する丸尾さんの答え。もちろんそういった一面もあるが、よくよく読み込んでいくと、時代や国に関わらず理解できる部分が出てくる。逆にそういう部分がある作品だから、現代でも上演され、人気があるのだと話していました。これは日本の近代文学だけでなく、シェイクスピアなど西洋の古典にも当てはまることなので、戯曲を読むときの重要な視点だと感じました。

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ディスカッションの後は各グループの代表者1名から、それぞれどのような意見が出たか、発表がありました。同じ戯曲を読んだ後ですが、三者三様の着眼点があり、とても面白い発表となりました。

初日のためそこからさらに掘り下げることはしませんでしたが、参加者へはヒントになるような視点が与えられ、翌日以降への期待が大きく膨らむ振り返りの時間となりました。『鹿鳴館』の一幕ラストでは“久雄”のセリフにより、衝撃の事実が発覚し幕を閉じますが、まさにこの日のワークショップともリンクしていたような気がしました。
4日間のワークショップが、最後まで有意義な時間になると感じられた初日のラストシーンなのでした。

レポート:福永光宏


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