アートキャラバン・サテライト企画レポート 合同会社Level19編

サンフォード・マイズナー・テクニック1週間集中クラス2023 in 静岡

日程

10月28日(土)14:00~21:00(7日目・最終日)

会場

人宿町やどりぎ座〒420-0037 静岡県静岡市葵区人宿町2丁目5−2

講師 黒澤世莉

概要はこちら

3都市で開催される合同会社Level19さんの企画「サンフォード・マイズナー・テクニック1週間集中クラス2023」の第一弾、10月22日~28日に開催された静岡クラスの最終日にお邪魔してきました。
講師の黒澤さんからは事前に、「連日のレッスンで参加者はちょっと疲れているかも」と伺っていましたが、最終日ということもあってか、むしろ1週間の集大成を出し切ろうと、参加者たちのモチベーションは高いように感じられました。

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開始時間になると、まずは前日の振り返りから始まりました。各人が前日に感じたことを語り、それに対し講師の黒澤さんがコメントをしていくという流れでした。
「サンフォード・マイズナー・テクニック」とはその名の通りサンフォード・マイズナーさんが考案した演技のテクニックですが、このクラスで特に何度も繰り返し話されていたのは、「“頭”は置いていく、相手をよく観察し、“身体”が感じたことを真っすぐに表現する」ということ。この日までのレッスンではエクササイズを通して、それができる“身体”を作っていたのだと思われます。
黒澤さんから参加者へのフィードバックは基本的に前向きな内容で、相手を否定することはなく、どうしてそう感じたのかを各人が納得いくまで時間をかけて振り返らせている印象でした。そして「こちらからはこう見えていた」ということもしっかりと伝えて、参加者は自覚している自分の身体と他者から見た自分の身体に相違があることを自然と知っていくようでした。

振り返りが終わると、今日のエクササイズに入る前に「リラクゼーション」の時間をとります。部屋を少し薄暗くして、各々好きなところで寝転がり、深く呼吸をします。
ここでも黒澤さんはいろいろとアドバイスをしながら参加者の状態をしっかりと観察しているようでした。大事なのは「呼吸を意識する」こと。しっかり吐ききり、しっかり吸い込むことで、頭をリラックスさせるのだとか。すでにこのやり方に慣れている参加者たちは、皆、思い思いに、自由に時間を使い、身体をリラックスさせていきます。

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そして、この日のエクササイズとして「リピテーション」が始まります。黒澤さんによると、「リピテーション」とは短い言葉を繰り返しながら、お互いがありのままに行動することで、「関係」について探検していく基礎練習です。
参加者はまず、パートナーを見つけて、目の前にある事物、相手の状態、それによって自分に起こった感情などを、そのまま言葉にしていました。それを受けた相手はその言葉を繰り返します。
目的は「思考を排除すること」で、頭で考えるのではなく、目の前にある事実だけに集中しなくてはなりません。これは見ているだけでも難しそうでした。思考に頼りがちな性格だと、どうしても展開や疑問などに流されがちですが、それをとことん排除していきます。
このエクササイズののち、今度は少しルールが付け加えられます。

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二人一組になり、まず一人が「アクティビティ」と呼ばれる単純な作業をします。「アクティビティ」は、折り紙を折る、編み物をする、般若心経を書くなど各自が用意し、急いで終わらせなければならない強い目的を設定するルールです。この「アクティビティ」を行っている人のところに、悲しい、嬉しい、好きなどの”強い感情”を準備したもう一人の人物が加わります。
ここから先ほどの「リピテーション」をしていくのです。

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忙しく作業をしているところにもう一人が加わるので、皆さんイラっとしたり困ったりという反応が多かったのですが、その感情を「イライラする」「嫌だ」など、そのまま言葉にしていきます。
ここで、さらにもう一つ負荷がかかります。黒澤さんの合図で、感情はそのままに、事前に覚えてきていた“セリフ”のやり取りをするのです。
それまで、「感情」、「事実」だけを繰り返し発するだけだったところに、突然、意味のあるセリフが入ってきます。そうすると、とても分かりやすく参加者たちはそれまでの感情を失い、急にセリフの持つ意味や感情の方に引っ張られてしまうのです。

よく、役者は「セリフに支配される」という言い方をしますが、ここまでそのことがハッキリとわかるワークも珍しいのではないかと感じました。参加者本人たちもそのことに気が付いており、何度かやるうちに徐々にセリフに捕らわれなくなっていきます。問題がしっかりと浮き彫りになることで、それを克服しようという気持ちが芽生え、どうすれば克服できるのかという発想にもつながるので、とてもいいエクササイズだと思いました。

全員が数回ずつ、このエクササイズに挑戦し、ついに終わりの時間になりました。
最後にこの日の振り返りがあり、参加者それぞれが自分の経験や今後の展望なども踏まえて、今回のクラスがそれにどう影響したか、いかに有意義な時間であったかなどを話します。中には黒澤さんのクラスが何回目かの方もいたようで、今回で、より理解が深まったと喜んでいました。

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黒澤さんからは、「サンフォード・マイズナー・テクニック」は、あくまでたくさんあるメソッドの一つであり、今後、演劇活動を続けていくうえで、各人が“武器”として、携えておくと、役立つ場面がある、とお話がありました。確かに演出家や座組によっては、他の演技のメソッドの方が良しとされる環境もあると思いますが、かなり特徴的で、わかりやすい効果もあり、とてもいい内容だったと感じました。
このあとLevel19さんは、新潟、福岡でもこのようなクラスを開催されます。少しずつでもこの“武器”を持った俳優が全国に増えていくことを願っています。

レポート:福永光宏

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