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日程
2024年1月9日(火)18:30〜21:30
会場 THEATRE E9 KYOTO
〒601-8013 京都府京都市南区東九条南河原町9-1
登壇者
■第1部「THEATRE E9 KYOTOアーカイブプロジェクトについて」
・佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター専任研究員・教授)
・新里直之(京都芸術大学舞台芸術研究センター研究職員)
・福井裕孝(演出家・THEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト)
・駒優梨香(脚本家・演出家・世界平和書店代表)
・あごうさとし(THEATRE E9 KYOTO芸術監督)
■第2部「京都・関西の演劇史について」
・九鬼葉子(演劇評論家・大阪芸大短期大学部教授)
・畑律江(毎日新聞客員編集委員)
・あごうさとし(THEATRE E9 KYOTO芸術監督)
・蔭山陽太(THEATRE E9 KYOTO支配人)
概要はこちら
京都駅からも徒歩で行ける劇場、THEATRE E9 KYOTO。鴨川のほとりの静かな立地にありながら、外観のモダンなデザインと天井が高く居心地のいいエントランスで、周囲にアートの香りを漂わせている素敵な会場です。
2部に分けて、テーマと登壇者を変えたシンポジウムでは、アーツシード京都さんのこれまでの取り組みや、関西・京都に特化した小劇場演劇の歴史について、とてもたくさんの情報を得られました。参加者の年齢層は広く、おそらくほとんどが京都・大阪で演劇に携わっている、もしくは演劇好きの方たちです。
第1部は、アーツシード京都さんがここ3年間取り組まれている、「アーカイブプロジェクト」がテーマ。初年度から3年目となる昨年までに、どのような成果や課題が出てきたのかを詳細に説明してくれました。特に面白かったのは、「アーカイブ」自体の背景の説明です。現在「アーカイブ」は、演劇に限らずどのジャンルでも取り組まれており、デジタル化、ネットワーク化によって様々なものの「アーカイブ」が可能になってきています。その一方で、何でも「アーカイブ」できるからすべてを残せばいいというわけでもなく、「アーカイブ」することへの疑問も生じてきているのだと言います。「アーカイブ」をどう活用するかまで、きちんと考えた上で、その活用法にあった「アーカイブ」の残し方をすべきであるという、先に進んだ議論がなされている印象でした。
今後は「アーカイブ」を“過去のデータ”としてだけなく、“未来の創造への資源”と捉え、大学の研究施設などを使って閲覧できるようにする取り組みにも発展していきたいとお話がありました。しかしコストや労力の面で解決できていないことも多く、課題はまだまだ残されているようです。
第2部では、当時からライターとして多くの演劇作品に触れていらした登壇者の皆さんにより、1980年代から2000年代辺りまでの関西の小劇場の歴史が語られました。京都、大阪、兵庫でそれぞれに別の動きがあったことや、共通する大きな流れとして、小劇場が閉館ラッシュを迎えた時期があり、舞台を作る機会も、鑑賞する機会も失われる危機があったことなどが伝えられました。そのような時期に優秀な演劇人が関東へ流出していったことを一つの反省として、関西では演劇関係者など民間を中心に「もう一度舞台芸術を盛り上げていこう」という気運が高まっていったようです。
様々な楽しいエピソードを交えて関西の演劇史を語った最後に、九鬼さんより、今の若い演劇人に伝えたいという内容が。助成金制度やそもそもの文化行政など大きな問題はあるにせよ、劇団は劇団でそれぞれに集客を頑張らなければなりません。そのためにかつて80年代に人気のあった劇団たちは何をしていたのかを知ることが、これからの劇団運営のヒントになればと、熱いメッセージをお話しされました。九鬼さん曰く、当時はライターの元に必ずプレスリリースやご招待のチケットが届き、さらに観に行った後にはお礼状もと、毎日のようにたくさんの郵便物が届いていたそうです。一方で、今はそのような連絡がほとんど来ないとのこと。そういった努力を続けることで、必ず専門家は劇団の名前や演目を覚えるし、気になるところには出かけ、周囲に宣伝をする。これが結果的に集客に繋がっていたのではないかとまとめていました。
今も昔も小規模の劇団でできることは限られていますが、一つ一つを丁寧に続けていくことこそが、将来の劇団運営に繋がっていくのでしょう。「関西演劇」という括りでの会でしたが、最終的なメッセージはどの地域にも通じることだったように感じます。かつて人気のあった劇団の集客ノウハウを今の若い劇団が学ぶことは、とても大切なことだと再認識できました。
レポート:福永光宏