アートキャラバン・サテライト企画レポート 石井光三オフィス編

桂やまとの落語つくっちゃおう!

日程

2023年10月21日(土)14:00~16:00

会場

東ソーアリーナ&遅筆堂文庫山形館
〒990-2338 山形県山形市蔵王松ヶ丘2-1-3

講師 桂やまと

概要はこちら

この日はちょうど、山形も寒くなり始めの日で、山形駅からすでに人通りが少なく、駅からバスで20分の会場周辺も閑散としていました。
そんな中、この「落語」をテーマにした企画に、かなり積極性のあるご家族が参加され、始まる前から期待のワクワク感でテンションも上がっているのがわかりました。
スタートすると、高座に現れた桂やまと師匠がまず、落語の基本的な構造を解説します。例えば、着物を着た一人の人間が、座りながら話す芸なのだ、ということ。そして、小道具としては扇子と手ぬぐいだけを使うことなど、落語を初めて見る人にもわかるように丁寧に説明していきます。実際に扇子や手ぬぐいで何かを表現して見せて、何を表していたかを客席の子供たちに答えてもらうと、皆さんちゃんと正解していました。
そして、冷静に見れば「扇子」と「手ぬぐい」なのに、「筆」や「本」に見えるのは何故なのかを改めて子供たちに問い、ここで師匠は「落語を見るには“想像力”が必要である」ということを訴えます。

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さらに落語と言えばお馴染みの芸、「蕎麦を食べるところ」を惜しげもなくレクチャーしてくださいます。どのようにしたらそれっぽく見えるのかを説明しつつ、客席全体で蕎麦をすすりました。こういった芸を上手くやるには、普段から周囲の人をよく観察することが大事だと教えてくださいます。
この日は参加者が少数だったこともあり、子供たちに羽織を着せて高座に上がる体験もさせていました。これはそうそうないことでしょうから、きっと子供たちにとっても強烈に記憶に残る経験になったと思います。

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ここまで落語の構造を解説した後に、師匠が短い噺を一席、披露してくださいます。落語の見方がわかったからか、子供たちも興味深く前のめりで見ているのがわかりました。

噺が終わると、次に子供たちからアイディアを募って、噺の続きを考えてみるというワークを行います。主人公がどこかへ買い物に行くという設定だけは決まっており、何を買いたいかなどを子供たちから募ります。かなり積極的な子たちだったので、どんどん独創的な意見が出てきて、それを師匠がホワイトボードに書いていきました。この後、休憩を挟んで、師匠が子供たちからの意見を盛り込んだ噺の続きを考え、披露してくれます。

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噺の続きをやる前に、もう一つワークがありました。それは鳴り物を自作すること。
噺の中で、馬に乗るシーンと雨が降るシーンがあることを伝え、馬の走る音、雨の降る音を出すための道具の説明がされます。馬の方はお椀を伏せてまな板の上で叩くだけで蹄の音が出るのですが、雨の方は工作が必要です。タコ糸にビーズ(玉)をつけたものをいくつかうちわにテープで貼り付け、そのうちわを横に振ることで、確かに雨が地面に打ちつけられた感じの音が出ました。それを数人でやることで、かなり臨場感のあるシーンになります。

準備が整ったところでついに師匠の噺が始まります。先ほど子供たちから集めたアイディアがどのように反映されるのかを楽しみに、噺の続きが披露されました。
途中、馬の出てくるシーンでは担当になった男の子がお椀で駆け足を表現し、また雨が降ってきたときには子供たちも保護者の方たちもみんなで雨の音を出しました。参加者からのアイディアもしっかりと盛り込まれたストーリーは、綺麗に“さげ”もついて、見事に完成していました。

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最後に師匠から子供たちに、これからの人生で大事なこと、いい人生だったと思える生き方に必要なものは“想像力”であると、相手がどう思っているのか、人の気持ちを想像できる人になってほしいとの熱いメッセージが送られました。落語で笑えた人にはすでに想像力があるのだからそれを大事にしてほしいという、温かいテーマが参加者に伝わったところで企画は終わりました。
参加人数こそ少なかったですが、子供たちにとって、とても貴重な経験となり、また心に残るメッセージを受け取れた素敵な機会になったと思われます。

レポート:福永光宏

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