アートキャラバン・サテライト企画レポート オフィス鹿編

OFFICE SHIKA PRODUCE 「地域活性 演劇プログラム」
3都市 俳優ワークショップ 札幌

日程

2023年11月19日(日)
A組(初心者向け) 13:30〜16:30
B組(経験者向け) 17:00〜20:00

会場

カタリナスタジオ
〒001-0010 北海道札幌市北区北10条西2丁目18番地1

講師

A組:菜月チョビ
B組:丸尾丸一郎

概要はこちら


札幌駅から、歩いて15分ほどの場所にあるカタリナスタジオ。地元の劇団所有の"スタジオ”だとのことでしたが、行ってみるとしっかりと舞台や照明設備などの揃った"劇場”で、実際に公演も頻繁に行われている場所でした。
現地制作として、サテライト企画の参加団体でもある、北海道で活動するラボチさんが入っており、オフィス鹿さんとしては初の札幌での企画でしたが、多くの地元の若手演劇人に参加していただき、スタートから、すでに盛り上がりを感じました。

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カタリナスタジオ 外観

A組は初心者向けといいながら、全くの初心者は少なく、地元の劇団や大学の演劇サークルで活動されている方も多く参加されていました。菜月チョビさんの講義内容は、主に“呼吸”を重視した、“身体”の作り方、在り方についてで、ストレッチや筋肉トレーニング、シアターゲームなど、俳優ワークショップとしてはシンプルなメニューに見えて、徹底的に“呼吸”を意識することで、かなり独特なメソッドになっていました。

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講師の菜月チョビさん


菜月さんの話には何度も「全身で呼吸しているイメージ」「常に同じ量の呼吸を使う」などのセンテンスが出てきます。また、例えば腕立て伏せでも、腕力で体を持ち上げるのではなく、腕を曲げたときに息を吐き切り、次に“全身”から声を出すことで、その声の圧力で体を上げる、という感覚を大事にしようといった、菜月さんならではのメソッドでしたが、繰り返し体現していくことで、徐々に、参加者にもその真意が伝わっていくのがわかりました。

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“身体”と“呼吸”というテーマは、一般的なワークショップだと、最初に行われる「脱力」の際に語られることが多いものですが、菜月さんは、それがダイレクトに演技にも関係すると言います。常に同じ量の呼吸ができる身体にすることで、どんな演技をしていても、舞台上において、一人の同じ人物として見えるようになると、また、四肢の隅々まで管が通っているとして、そのすべてに、同時に同量の空気が入る訓練をすることで、どんな動きをしても、舞台上で違和感のない、“かっこいい”動きに見せることができるのだそうです。

実際に、稽古の前半と後半に1度ずつ、「名前鬼」というシアターゲームが行われましたが、前半にくらべて後半の方が、皆さん、声も良く出ていたし、動きの見栄えも良くなっていました。“呼吸”の使い方を意識するだけで、短時間でもこれだけの変化があるのだと驚かされました。

B組は丸尾丸一郎さんによる戯曲を使ったワークショップ。まずは丁寧に時間をかけて参加者に自己紹介をしてもらい、さらに演劇に関する現在の悩み事などを聞いていました。一人ひとりの発言に対して細やかに、優しく、ときに面白可笑しく、丸尾さんが返答をしていくことで、参加者もどんどんリラックスしていきます。

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講師の丸尾丸一郎さん


次に、短編の戯曲を配り、参加者を3つのチームに分けて、それぞれで読み合わせをします。文化祭を直前に控えた高校生たちのストーリーで、5人の登場人物がそれぞれに特徴的で役割がはっきりとしており、一方でどのようにも演じられる自由度もある作品なので、今回のような機会にはぴったりの戯曲だと思いました。

まずは参加者同士で読み合わせるので、特にディレクションはなく進みます。15分ほど各チームで本読みをした後は、すぐに1チームずつ舞台に上がっての発表に移ります。丸尾さんと別チームのメンバーが客席にいる中、台本片手にではありますが、舞台上で演じることになるので、最初のチームの方たちはとても緊張していました。発表が終わると、丸尾さんがとても細かくコメントをしてくれます。それはもうすでに「演出」の域で、参加者にとっては、第一線のプロとして活躍している丸尾さんの演出を受けられるとても貴重な体験になったはずです。コメントを受けた上で再度同じチームが発表します。今度は途中で止めながら、その都度演出がつけられていき、それはもう、まるで本番稽古さながらの様子でした。


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ラストシーンまでたどり着くと、今度は見ていた他のメンバー全員に、感想が求められます。これは、他人の発表を見ていて、何かに気づくことも大切だという教えで、おそらく、感想を言うことで、次に自分たちが演じる番になったときに、自分が指摘した部分を、より強く意識することになる効果もあったのだと思われます。

A、B組ともに、参加者全員が開始時からとても前のめりに受講しているのがわかり、こういった体験が札幌において、とても貴重な機会なのであろうと実感しました。終了後、参加者の皆さんの充実感に満ちた表情に、このワークショップの成功を感じました。

なお、同内容のワークショップは、12月6日(水)大阪市立芸術創造館、12月18日(月)PAPIO ビールーム 福岡千代音楽・演劇練習場でも開催予定です。

レポート:福永光宏

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