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日程
2023年12月16日(土) 13:30~15:00
会場
IKODE瓦町 多目的スタジオ
〒760-0054 香川県高松市常磐町1-3-1 瓦町FLAG 8階
講師・出演 劇団 山の手事情社
概要はこちら
開催場所は高松の中心街にある、商業施設内の市営スタジオ。施設内には他にもいくつかの部屋がありましたが、どこも様々な文化活動に使われているようで、この建物が市民にとって文化の創造・発信基地のような存在になっているのだと感じられました。
インフルエンザなどの影響で、多少、当日キャンセルが出たようでしたが、開けてみれば80名近くの参加で、大盛況のワークショップとなり、劇団員さんたちも、お出迎えの準備に余念がありません。
制作には、劇団の方たちとは別に、地元で様々な演劇公演に関わっていらっしゃるシアター・デザイン・カンパニーの植田良子さんらも入っておられ、スムーズな応対で会場に次々と参加者が入ってきました。参加者は家族連れが多く、また、学生さん、地元の演劇関係者と思われる方々もたくさんいらっしゃいました。
開場時間から、劇団員さんたちは積極的に参加者の皆さんとコミュニケーションをとっており、早い段階から場内にリラックスした雰囲気を作ることに成功していました。天気の影響もあって少し遅れられた参加者もおり、やや時間を押してワークショップはスタートしました。
まずは劇団員たちと一緒に体をほぐすところから。桟敷に座っていた参加者に立ってもらい、体のあちこちを各々叩いていきます。
次に、左右の手で順番に指を折っていくのですが、片方の手は指を1本折った状態から、もう片方は全く折っていない状態からスタートし、一つずれで指を折ってカウントしていきます。簡単そうに見えて、これが意外と難しく、こういった動きを徐々に体全体の動きにしていきます。例えば、「手を胸につけるときはパーにして、前に突き出すときはグーに、それを左右交互に動かす」、「片手は2拍子で動かし、もう片方の手は3拍子で動かす」、それを上半身と下半身でもやったりなど、動きのオーダーはどんどんと難しくなっていきます。役者が最初にやって見せてから、参加者もトライするのですが、無意識に両手が同じ動きになってしまうためで、とても難しいことなのだと認識されていきます。
劇団員からは、難しいが訓練すればできるようになると説明があり、役者が普段どのようなエクササイズをしているのか、興味が湧いてくるのです。
次に、いろいろな“歩行”ということで、劇団員たちにより、スローモーションでの歩行が披露されました。参加者に「やってみたい人!」と声をかけると、子どもたちを中心にとてもたくさんの人から手が上がり、みんなで前に出て、今、目にしたばかりのスローモーションに挑戦します。当然ながらこれもなかなか上手くはいかず、改めて役者の身体能力のすごさを感じることになります。
さらに、今度は感情をともなった歩行ということで、「悲しい」「嬉しい」「怒り」など、テーマを与えて、その表現をしながら歩いていきます。さらにさらに、「喜んでいるけど悲しい」「怒っているけど嬉しい」など、複雑な感情になっていき、劇団員たちがテンションも高く、それらを次々に表現していきます。参加者も見ている分には楽しいのですが、だんだんとその難しさを意識するようになり、一緒にやってみることを躊躇する子どもも増えてきます。そんなときも劇団員たちが優しくサポートして参加を促し、恥ずかしがっていた子どもたちも、できないなりに表現してみるのです。
この後も、リラックスした状態から一瞬である感情を表現したポーズをとるなど、身体能力と感情表現を合わせた様々なエクササイズを行い、子どもも大人も、俳優の能力の高さに注目するようになります。
全体の8割ほどの時間をワークにあて、5分ほど休憩をとった後、最後に劇団員たちによる小作品『走れメロス』の上演がありました。照明はなく音楽のみの環境で、劇団員たちの身体能力と表情だけでストーリーを表現していきます。すでにワークショップでそれがどれだけ大変なことなのかを体感した参加者たちは、ものすごい集中力で作品を鑑賞していました。
演劇にはどうしても“観方”があり、慣れている人は特に意識することなく作品に入り込めるものですが、そうでない人にとっては、実はとっつきにくさを感じることもあります。今回のワークショップでは、観客自身も身体表現を経験することによって、演劇を観る最初のハードルが取り払われるのだとわかりました。
演劇の観方を知った参加者が、今後もたくさんの作品に触れ、観劇や創作が彼らの日常になってくれたなら、この企画は大成功だと言えるでしょう。
子どもはもちろん、大人もとても楽しそうに帰っていきました。
こちらの企画は、2024年1月に島根県の益田・松江会場でも開催されます。
https://mirai-pjt.jp/n/nd6d8dd6a831b
レポート:福永光宏