作品に関わった人が幸せになれる現場運営を (エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ株式会社 加藤はるなさん)

2007年、パフォーマンス集団『BLUE MAN GROUP』の招聘をきっかけに、演劇やミュージカルなどのシアター事業にも積極的に取り組んできたエイベックス。自身の経験から入社時は音楽分野に関わり、その後、プロデューサーとして数々のミュージカル作品を手掛けてきた加藤はるなさんに、経費の増大やチケット代の高騰などさまざまな課題とどう向き合っているか、舞台制作者としての思いを伺いました。

インタビュー・文/上村由紀子
取材日/2024年11月12日

 

――加藤さんがプロデュースを担当なさった『WHERE'S CHARLEY?チャーリーはどこだ!』大阪公演は2024年5月に実施されました。新型コロナウィルスの扱いが5類に変更されてちょうど1年後の上演でしたね。

新型コロナウィルスの扱いが2類だったときに上演した作品に関してはマスク着用がマストでしたので、ダンスシーンの稽古などでは呼吸も苦しくなり、出演者は大変だったと思います。今回は稽古中のマスク着用はマストではなかったのですが、インフルエンザが流行したこともあり、皆さん自主的にマスクをした状態で稽古に臨んでくれました。コロナが蔓延していた時期を経たことによって、体調管理に関しての意識がカンパニー全体で高まった実感はあります。

――打ち上げなどは実施できましたか?

東京公演を無事に完走できたこともあり、大阪公演の前に皆で集まる機会を作ることができました。コロナ禍前は稽古中の親睦会なども気軽に開催できたのですが、やはり以前と比べ、打ち上げや食事会などの実施については少し慎重になってはいると思います。

◯コロナ禍以降変化した券売スピード

――ここ数年の演劇界での大きな変化のひとつがチケット代の高騰だと感じます。プロデューサーとしてのご実感などいかがでしょうか。

今は公演に関する見積もりに記載された数字を見るたびに驚きます。照明や大道具関連の人件費もそうですし舞台装置などに使用する資材の値上がりも凄いことになっていますから。と、どうしてもその値上げ分をチケット代に乗せざるを得ない状況もありますよね。本当は座席によってチケット代をもう少し細かく区分できればいいのですが、なかなか難しいこともあり……チケットに関するさまざまな問題は今後も試行錯誤を続けていくことになると思います。

――経費の増大という点では、2024年のトラック問題は大きいですよね。

まさにそうで、これまでは前の公演地での千秋楽の後にバラ(解体)した舞台装置や小道具、衣裳などをトラックに積み、夜通し走った状態で次の公演地に輸送する方法を取っていましたが、法律の改正などでゆとりのあるスケジュールを組む必要が出てきました。そうなるとどうしても舞台の撤収、輸送、仕込みといった流れに以前より時間がかかり、人件費を含めた経費も上がってしまうという状況です。

――券売スピードの変化などはお感じになりますか?

コロナ禍以前と比べると初日直前の動きが活発になっている印象はあります。お客さまご自身が体調不良等のリスクを考えてギリギリに購入なさるパターンが増えているからかもしれません。それにより、作品プロモーションもプレイガイドでのチケット売り出し時期だけではなく、情報をコンスタントに出しながら、必要であればゲネプロ公開前にメディアに向けた稽古場取材会などを催すといった、初日が近づいてからのプッシュにより力を入れる現場も増えた気はします。

◯課題は観劇人口のすそ野を広げていくこと

――プロデューサーとして現時点でお感じになっている課題などあれば教えてください。

強く思うのはどうしたら劇場に足を運んでくださるお客さまを増やせるか、観劇人口のすそ野を広げられるかという点です。集客に関しては、やはり出演者の人気などに頼る部分も多く、ここは課題のひとつであると考えています。エイベックスはシアター事業への参入が遅いのですが(2007年)そのぶん、プロデューサーの企画が実現する機会も多く、このスピード感や自由度は強みのひとつだとも感じます。

――いろいろフレキシブルな動きも可能。

それはあると思います。ただ、ビジネス面の数字には如実に結果が現れますから、その点はシビアですけど(笑)。わたしは幼い頃からずっと音楽をやっていたこともあり、プロデューサーとしてはミュージカル作品を担当することが多いです。海外で上演された有名作品の上演権をいち早く……というよりは、観終わったあとに胸に希望が宿るような作品が好きで、そういうミュージカルを今後もプロデュースできたら嬉しいですね。そこに加えて、作品に関わってくれた人全員が、エンターテインメントとしてもビジネスとしても幸せになれるような現場の運営ができたら、と思っています。

 


「日本の演劇」未来プロジェクト 対象公演

ブロードウェイミュージカル「WHERE’S CHARLEY?チャーリーはどこだ!」

2024年5月18日〜19日 大阪府大阪市 森ノ宮ピロティホール

タクフェス第12弾「夕」

2024年12月12日 北海道札幌市 カナモトホール(札幌市民ホール)

No items found.
インタビュー
広報事業
2024年度

期間
開催地
会場
公式サイト
備考