コロナ禍で変化したこと、変わらないこと (パルコ 尾形真由美さん)

演劇、ミュージカル、ダンスなどのプロデュース公演の企画製作や海外作品の招聘をおこない、PARCO劇場を中心に、全国の劇場で上演している株式会社パルコの演劇事業部。新たに立ち上がったゲーム事業との協働クリエーションなどさまざまな取り組みも実施するなか、現場の声をお伺いしたく、2024年に全4都市33公演ツアーをおこなった『ハムレットQ1』プロデューサー・尾形真由美さんに、創作環境をはじめ券売をめぐる動向などについて、制作者の視点からお話いただきました。

 

インタビュー・文/上村由紀子

取材日/2024年11月15日

  

――『ハムレットQ1』は2024年5月のPARCO劇場を皮切りに、大阪、愛知、福岡と各地域でも上演されました。新型コロナウィルスが5類に分類されて約1年後の公演実施、いかがでしたか?

 

稽古のスタートが2024年4月だったのですが、新型コロナウィルスの扱いが2類だった1年前と比べると、カンパニー全体の雰囲気がオープンになり、出演者の方々も以前のようなコミュニケーションをとることができて、お稽古場の雰囲気が活発になった気がします。とはいえ、何が起きるかわからない状況ではありましたので、制作サイドからはそれぞれ気を付けてくださいと注意喚起もさせていただきました。

 

――稽古中などに出演者や関係者に体調不良が生じた場合、コロナ禍前と比べ申告しやすくなった印象があります。

 

確かにそれはあります。制作側からも「何かあったらすぐに言ってほしい」とあらかじめお伝えしていましたし、出演者の皆さんも気になる不調があったさいは遠慮なく伝えてくださっていたと思います。過去には「少しくらい熱があっても稽古には行く、舞台にも出る!」といった考え方もありましたが、そのあたりもコロナ禍を機に変化したのではないでしょうか。

 

◯カンパニーに多大な貢献をしたスウィングの存在

 

――『ハムレットQ1』は全公演完走でした。

 

今回はスウィングの方に入っていただきました。とても大変で、ご苦労も多い立ち位置ですが、男女1名ずつ現場にいてくださったおかげでカンパニー全体に安心感も生まれましたし、プロデューサーとしても非常に心強かったです。スウィングとして複数の役を演じられるように準備しながら、他の面でもいろいろサポートしてくださり、本当にありがたいと思いました。

 

――東京公演と各地域での上演、たとえば券売スピードにおいて違いなど感じることはありましたか?

 

公演全体において、やっとお客さまが戻ってきてくださったという感覚があり、東京と各地域での券売スピードについて大きな違いなどは特に感じませんでした。吉田羊さんをはじめ、キャストの方たちが積極的にパブリシティにご協力くださったことも大きかったかもしれません。東京での公演が好評で、その力に押されて各地域のチケットも売れていくというとても良い形だったと思います。福岡(久留米)公演に関しては、劇場が大きく客席数が1500だったこともあり、学生券を除いて4つの席種を設定しましたが、おかげさまで多くの方に観ていただくことができました。

 

――昨今、経費の増大もあり、チケット代が高騰しています。

 

自分で舞台のチケットを購入するときの金額を確認して驚くことがあります。逆にプロデューサーとして実際に予算書を作成すると「……うわぁ、どうしよう」ってなりますが(笑)。チケット代の設定は作品ごとに違いますが、『ハムレットQ1』東京公演ではマチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)で価格を変える販売方法を試みました。

  

◯マチネとソワレ、観客動向の変化

 

――チケットの売れ行き、ある時期からソワレよりマチネの方が良くなった印象もありますが、ご実感としていかがでしょう?

 

コロナ禍前からすでにそうでしたよね。この世界に入って長くなりましたが、入ったばかりのころはPARCO劇場を含め、演劇=夜公演がデフォルト、みたいなところもあったと記憶しています。そこから時が経ち、10年前にはすでにマチネの方が人気だったとの印象です。

それはつまり、仕事帰りに観劇していた20代や30代の人たちが歳を重ね、ライフステージの変化はありつつ変わらず劇場に来てくださっているということなのではないかなと思います。また、若い世代の方たちは働き方改革などもあり、有休をとって平日の昼間に観劇するパターンも増えていると聞いています。マチネとソワレの公演スケジュールをどう組むのかも作品によって異なったりはするのですが。

 

――『ハムレットQ1』は衛星劇場(CS)でのテレビ放送もありました。

 

衛星劇場で放送していただいたおかげで、普段、資料用に自社で撮影しているものよりクオリティの高い映像を残すことができたと思います。また、その放送の視聴をきっかけに「次は劇場で」と感じてくださる方がいたら嬉しいですよね。台詞劇も特に翻訳物は契約などの問題もあり映像としてご覧いただくことが難しい面もあるのですが、このあたりもいろいろ方法を探っていきたいです。

 



株式会社パルコ
エンタテインメント/演劇事業部
制作チーム
プロデューサー
尾形真由美(おがた・まゆみ)

東京都出身。明治学院大学社会学部卒。劇団四季を経て、株式会社パルコに入社、劇場部(現 文化創造事業本部 エンタテインメント/演劇事業部)に配属。以降、制作チームにて、翻訳劇、オリジナル作品等、数々の作品をプロデュース。2024年は、「ラヴ・レターズ」、「ハムレットQ1」、「破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~」などを担当。

 


 

「日本の演劇」未来プロジェクト 対象公演

ハムレットQ1

2024年6月22日〜23日 福岡県久留米市 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

 

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