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――サポートが必要な方々にとってタカハ劇団の作品が観劇の選択肢に入った実感はあったりしますか?
半田 あります。『美談殺人』を観てファンになってくれて、『おわたり』、『ヒトラーを画家にする話』と観に来てくださいました。それはサポートがあるから楽しめるっていう理由もひとつあるんですけど、シンプルにそれが作品に触れるきっかけになって、次は「高羽さんの作品が観たい」になる。本来私たちは作品を楽しんでもらってなんぼなので、真髄に近づいてきたなと思います。
高羽 ただそもそも観劇の習慣がないという方も多いので、そういう意味での浸透はまだまだこれからだなと思います。自分が観劇できると思っていないっていう人がまだまだたくさんいるとは思います。
――長い道のりになりそうですか?
高羽 いや、でも思っていたより早いかも。タカハ劇団が約3年でここまでたどり着けたというのもあるし、助成金のシステムも2023年度から変わったし、スピードが早いなと感じています。それは社会全体がなんとなく、手話話者が出てくるドラマが近年多く制作されていていたりとか、合理的配慮が義務になったみたいなところもあって、追い風になっているなということは感じていますね。
――タカハ劇団として進めていこうとしていることはありますか?
高羽 お子さんがいる方とか外国語の話者の人に対して間口を更に広げることをしていきたいです。あとは作り手側にいろんな特性を持つ人たちが参加できるようになるっていうのがまた次の段階なのかなと思っています。
――外国語に関しては、タブレットが浸透さえすればかなりスピードが早いように思いますが。
高羽 ね。取り入れやすいですよ。翻訳さえしてもらえれば(笑)。
――そっか。それがかなりお金と時間がかかりますね。
高羽 だから新作だと結構難しいかもみたいなこともあるんですけど、それこそ(インバウンドなどで)商業的なメリットがある取り組みだと思うので、これは大きな会社の人たちも手がつけやすいかもしれないなって思うんです。それができれば、海外に配信することもそのままできるので良いんじゃないかとは思いますけどね。
――たしかに!
高羽 あとこれはまだ全然答えは出ていないんですけど、気になってるのは、車椅子のお客様の席の選択肢がすごく少ないことです。どうしても上手寄りとか下手寄りとかの後ろのほうになってしまう。鑑賞サポートサービスで大事なことは選択肢を増やすことなんですよね。健常の人たちより選択肢が極端に少ないっていう中で、どうやって選択肢を増やそうっていうときに、どの席に座るかって結構大きなことだなとは思うので。
――私たちも席が選べる公演だと嬉しいですからね。
高羽 そうなんですよ。あれが全然できないことが多いから。
――以前、半田さんが「タブレットならいつでも貸し出せますよってなったらいいな」とおっしゃってましたけど、それも選択肢を増やすことに繋がりそうですね。
半田 そうですね。今は鑑賞サポート付きの公演は決まった日に行っているんですけど、そうなるとお客さんの行ける日程の選択肢が限られてしまうので。タブレットが常にあって、「今日は鑑賞サポートの日じゃないけど字幕のオペレーティングができる制作スタッフがいるからやっちゃいましょうか」みたいなのが理想です。
――制作の中で、取り入れてよかったなと感じることはありましたか?
高羽 役者の顔つきが変わります。今の段階だと、鑑賞サポートサービス付きの公演に出演した経験がある人はすごく少ないので、多分この経験の中で、その人の中の「観客」というものの概念が変わる瞬間があるんです。稽古場に手話通訳者がいるというだけでも違うし、事前舞台説明会でお客様から手を叩く拍手ではなくい手話の拍手をもらう瞬間もそうだし、「あ、今この人の中で価値観が大きく変わったんだ」とあからさまにわかる(笑)。「届けたい!」みたいな気持ちがパッと強化されるんですよ。それを経験すると、もっとやりたいとか、もっといろんな人に見てほしいみたいな、前向きなエネルギーが生まれる人がすごく多い。それはおもしろいです。
半田 今の話に付随するところで、制作としては、そのために役者さんやスタッフさんに協力してもらわなきゃいけないことが増えるので、そこを理解してもらうために「作品を観に来てくれる人に届けたいんだ」という気持ちを丁寧に伝えることは大切にしています。きちんと私や高羽さんの口から伝えるようにすることで、その先の表現ができるようになるというところはあるかなと思っているので。あと、お客様的な話で言うと、観劇後の感想会みたいなものをパラブラさんやTA-netさんが用意してくださって。
――感想会とは?
半田 タブレットや舞台手話通訳を利用した方が集まっての感想会を毎回実施してくれているんです。そこで語られることが徐々に、「字幕タブレットを使ってみてどうだった」とか「舞台手話通訳がどうだった」とかじゃなく、「作品のここがおもしろかった」とか、「こういう考察をしている」とか、そっちのほうにシフトしてきているんですね。それってすごく嬉しいことで。最初の頃にそこで話されていたような“見づらいところ”“使いづらいところ”が減って、お客さんがシンプルに作品を楽しめる域に達したということだと思います。とても嬉しいなと思いました。
――表現の話で言うと、例えば高羽さんの作品では手話通訳者が参加されることが多いですが、表現に関わることなので、普通の手話通訳とは違いますよね?
高羽 そうですね。例えばニュース映像とか政治家の演説の横にいる方と、舞台手話通訳の方はまったくもって違う職能だと考えたほうがいいと思います。手話ってどうしてもローコンテクストなものなので、表現しきれないものがたくさんあるんですけど、それをどういうふうに取捨選択するかは翻訳家に近い作業になります。俳優の感情表現についても、手話を頼りに観る方は、基本的に手話通訳者を見て舞台を理解することが多いので、その役者の演じ方の特徴であったり、どう役づくりをしているのかまで手話通訳者が理解している必要がある。だから稽古場から一緒に舞台手話通訳をつくっていくことになるので、そのぶん拘束時間も長いし、かかる負担も大きい。通訳って普通は途中で交代したりするんですけど、うちに関しては申し訳ないが全部やってもらいました。それは途中で交代してしまうと、ストーリーや演技の流れが途切れてしまうというのがあるから。そういう意味で、舞台手話通訳者はかなり大変ではあります。そこでの第一は、観客がどういうふうに楽しみたいかということです。「なるべく耳が聴こえる人たちと同じように、同じタイミングで笑って同じタイミングで泣いてっていうことをしたい」という思いに応えたい。台詞がわかればそれでいいかっていうとそうじゃない。だったら台本を読んで終わりでいいじゃんってなってしまう。いいエンターテインメントとして、質の高いものをつくろうという考えで、ちょっとずつみんなで無理してやっています。
――最後にアクセシビリティに関して、演劇界で取り組んでいけたらいいなと思われるところはありますか?
高羽 ひとつ、チケットを買うのがとても難しいというところはあります。現状のシステムのほとんどが、目が見えなかったらどうやって買うのっていうところがあるので。当日券も、車いすの方だったり杖を突いている方が当日券の列に並ぶのは大変だったりしますしね。各劇団のHPとかも音声読み上げに対応していないようなつくりだと届かない情報があります。だから「チケットを買う」ことへのハードルが今はすごく高い。そこはチケットを売るプレイガイドさんたちのご協力がすごく必要だなと感じています。
――現状、タカハ劇団さんはどうやってチケットを売っているのですか?
高羽 うちはパラブラさんの窓口に集約しています。ただこれだとなかなかお客さんは増えづらいんですよね。
半田 私は、劇場に常設の機械(タブレット端末や発信用のPCなど)があればありがたいなと思います。劇場自体にその設備があれば、機材のレンタル費用がカンパニー負担じゃなくなるので、それだけでも私たちは助かります。あとは劇場さんに、一人でもいいのでバリアフリー担当の専門のスタッフがいてくれると非常に安心だなと感じます。なにかがあったとしても対応してくださる方がいれば嬉しいです。
取材・文/中川實穗