シリーズ:劇場のホスピタリティ 「小劇場で取り組む鑑賞サポート」


〇鑑賞サポート付き公演を実施しわかったこと

――鑑賞サポート付きの公演を重ねてきて気付いたことはありますか?

半田 メニューの組み合わせによって利用者が増えるとかはけっこうわかってきました。今のところ、「事前舞台説明会」と「舞台手話通訳」と「音声ガイド」があると一番いいのかなと思っています。『おわたり』(2023年)は事前舞台説明会はしたのですが、舞台手話通訳と音声ガイドがなかったので参加者が減ったのだと実感しました。

高羽 舞台手話通訳って、字幕タブレットとか事前舞台説明会に比べて利用者に浸透しているというか、すでに手話通訳を頼りに演劇を観るという文化がある程度形成されている気がします。それによって、利用する人たちの繋がりもあるし、舞台手話通訳者さんにファンがついていたりもするので。やっぱりそこがあるのとないのとでは全然違いますね。あとは中途で聞こえなくなった人は舞台手話通訳だけ見てもわからなかったりするので合わせ技が使えるほうがいいとか、いろんなことがわかってきました。あと、『美談殺人』の時は字幕付きの映像配信をやったんですけど、字幕付きのほうを買ってくださる方がすごく多かった。

半田 字幕なしと半々くらいでしたよね。

――毎回、駅からの移動サポートもありますが、利用される方は多いですか?

半田 そこは1~2名ですかね。

高羽 移動については慣れている方もいらっしゃいますし、公共交通機関のサポートも整っていますから。移動に関するサポートは社会的に充実しつつあるというのはあるかなと思います。

半田 あと介助者無料というサービスもあるので、介助者が一緒に移動しているというのもあるかもしれないです。

――お客様からはどんな反応がありましたか?

高羽 そういうことはあるだろうなと思ってやっぱりそうだったのは、健常の方の中には、鑑賞サポートサービスのある公演を避ける方がいるということでした。「気が散るかも」とかそういう部分で。ただ結果的に「そう思っていたけど、観たらすごく自然に演出の中に溶け込んでいたので観やすかった」とか「新しい発見があった」とかポジティブな感想をもらうことが多かったです。

舞台手話通訳の様子(『ヒトラーを画家にする話』)

――どうして意見がひっくり返ったんでしょうか?

高羽 舞台手話通訳者の位置を固定しないというのがとても大事なのかなと思っています。芝居にちょっと絡ませたりとか、お芝居の変化に合わせて演技として動いてもらう。「同じ作品の中にいる人ですよ」ってすることに大きな効果があるだろうと思ってやってはいたんですけど、実際に効果がありましたね。

――ちなみに気が散るっていうのは、いないはずの人が舞台上にいるのが気になるのでしょうか。

高羽 それもですし、人間心理として、自分より手厚く扱われている人がいる気がすると不満を感じる人がいるっていうのもあるのかなと想像します。なんかあの人たちばっかり丁重に扱われているなと思うことで疎外感を感じることがあるんですね。そもそも凹んでいる部分を引き上げて同じにしている作業なので、特別丁寧に扱っているわけではないのですが、人間はそういうことがわからなくなっちゃう時がありますから。

――たしかにそれは劇場に限らずいろんな場面であることですね。

高羽 ありますよね。でも一回観てみると全然そんなことはないことがわかるはず。むしろ舞台上にある情報量がシンプルに増えるのでトクかもしれない(笑)。

――ちなみにタブレットが光ることに対しての抵抗はあったりしますか?

高羽 それはお客様からは聞いてないんですけど、我々のほうがパラブラさんに「暗転中は大丈夫なんですか?」と聞きました。パラブラさんは「特殊なフィルムを貼っているので画面は発光しませんよ」って言うんだけど「ほんとですか?」みたいな。実際、劇場で見たら全然大丈夫でしたね。お客様に対しては、客入れ中のアナウンスに「今日は字幕タブレットを見ている人がいます」ということをちゃんと伝えておくっていうのが大事かな。鑑賞の妨げにはならないですよっていう事前の周知はとても大事です。

座席に設置されたタブレット。ここに字幕が表示される。特殊なフィルムが貼ってあり、周囲は光が気にならない

タブレットは座席それぞれに設置される

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