シリーズ:劇場のホスピタリティ 「『ここで観たい』と思われる劇場づくり」

〇博多座がめざしているもの

――今後のために、観劇環境にまつわることで考えていることはありますか?

岩戸 お客様の気持ちの折れ線グラフがあるとしたら【公演にいきたい→チケット取れた→博多座に来た→ロビー楽しい→席に座った→舞台おもしろい→来てよかった!】みたいにきれいに右肩上がりになっていくのが理想ですが、実際は途中にいろんなストレスがあって、駅からの道に迷うとか、雨が降ってくるとか、座席に座っても前のめりで視界が遮られるとか、感情のグラフがジグザグしてしまう。実は僕自身も出張や旅行の移動が本当に苦手で(笑)。なので、お客様の「ストレスを減らして、テンションは上げる」、ということは考えます。

城戸 リピーターさんをいかに増やすかというのはずっと課題だと思っています。「博多座ラブ」にしたいんです、それも全国のお客様を。そのためどうしていくのか。これからも観劇環境を整えることを続けていきたい。お客様のご要望も多岐に渡っていくので、そこをどうクリアしていくのか。それらを積み重ねていきますので、皆さまに、博多座へお越しいただききたいです。

岩戸 あとは、博多座は「公設民営」で、福岡市の劇場なので、そこに関する使命感と言いますか。博多座が他県の人に褒められることで、福岡の人が「自慢の劇場」だと思ってくれると嬉しいし、他県の方に博多の街も楽しんでいただきたいですし、SNSでそういうご意見を見ると「よし!」と思いますしね。

博多座外観

西中 公設民営に関連した話で言えば、市民の人にももっと愛してほしいです。やっぱり福岡市がつくった劇場なので。全国の方に来ていただくのはもちろん嬉しいですが、福岡市民で客席が埋まるのはひとつの理想だと思っています。市民の方に早く博多座に気付いてほしい。「あなたたちのものなんですよ、博多座は」と思っていますね。

――公設民営であるからこそ。

西中 はい。まだ「自分と関係ない場所」だと思われている方が多いと思うんです。そこにある距離を縮めたいなと思っています。

岩戸 大博劇場(1920~1972年に博多にあった劇場、映画館)が閉館してから博多座ができるまでの数十年、歌舞伎を常打ちできる小屋がなかったんです。その中で博多座は、福岡で定期的に歌舞伎を観られるように、さらに大型ミュージカルなども上演できるようにと誕生しました。そこから始まって、25周年を迎えて今に至るので。

西中 劇場がここにある使命として、演劇ファンだけを集める場所じゃないんだろうなというのはずっと思いながら。福岡市民のみなさんとどうしたら接せられるかなっていうのは、きっとみんな考えていることだと思います。

城戸 演劇は「わからない」と思われている方もいらっしゃると思うのですが、一度博多座に来ていただければ、楽しさを味わっていただけるのではないかと思っています。

博多座

福岡市からの委託を受け、劇場「博多座」の運営を担う会社として1996年に設立。経済界、興行界、行政が一体となって演劇の公演を製う形態で、製作会社の枠にとらわれず、歌舞伎、ミュージカル、ストレートプレイなど「芸どころ博多」にふさわしいさまざまな演目を常打ちで興行している。劇場としての博多座は1999年開場、客席数は約1500(花道などの使用で異なる)。特に九州地方の文化芸術をけん引する存在。

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